近年では、日本やアジア諸国をはじめ2型糖尿病、メタボリックシンドローム、脂質異常症などの生活習慣病が増加しております。アルコール依存症はアルデヒド生成要因です。これら疾病は直ちに自他覚症状を生じるわけではありませんが、様々な合併症や老化の原因になっています。これらは糖化ストレスが強い状態の実例です。

糖化ストレス概念図
糖化ストレス概念図

還元糖、脂質やアルコール代謝物のアルデヒド基が蛋白と非制御的に反応し、蛋白翻訳後修飾を経て糖化最終生成物(advanced glycation end products: AGEs)の生成と蓄積、蛋白の架橋変性や機能性劣化、細胞内シグナルの活性化や組織障害を惹起します。これはメーラード反応ですが、それは一部の反応にすぎません。生体内ではAGEsのほか、グルコース過剰時のTCAサイクル産物であるフマル酸によるサクシニル化生成物、分解排泄が困難なラセミ化生成物など様々な蛋白恒常性の異常が生じます。蛋白以外にも、脂質恒常性の異常、DNA塩基の異常修飾、アミロイドの変性・難分解性化も生じています。生体内におけるこれら生成は身体の退行性変化の要因になることから、「糖化ストレス」の概念は広くとらえる必要があります。

AGEsをリガンドとする生体内受容体もRAGE(Receptor for AGEs)を含め数種類報告され、その反応機構の究明は今後の課題であります。一方、AGEsの生成抑制成分や分解排泄経路に着目したプロテアソームや酸化蛋白質分解酵素などについても明らかにする必要があります。排泄、分解の問題は脂質、リポ蛋白、DNA塩基、アミロイドにも及ぶことでしょう。これらの研究課題解明には、糖化ストレス全体を広い視点からとらえて、AGEsや他に糖化ストレス修飾物や生成排泄経路の研究、測定法の確立、加齢性変化の研究、創薬、機能性素材の探索について総合的に検討することが極めて重要であると考えます。